※このレポートはドラム(リズム楽器)のセミナーであることに重点をおき、プレイヤーにとって有意義と思われる、先駆者のお二人のコメントの書き起こしを主眼としております。分かりやすくいうと、先輩プレイヤーの言葉・在り方としての部分しか書き起こさないよ、MIへの入学を視野に入れてる人・楽器やる人にとって意味がありそうなとこしか拾ってないですよ、「○○さんキャーっvv」といった類のエピソードは落ちてないですよってことです。まずはご了承を。
淳士(ex.シャムシェイド)ドラムセミナー
 場所:MIジャパン東京校
 日時:05/03/31(THU)
 3/31、MIジャパン東京校の1Fスタジオ。学校ということで教室的な場所での開催を想像していたのだが、専門的なだけあってちゃんとスタジオ然とした場所であり、ステージとして高くなっている部分やPAブース、照明などの設備が常設されているようすの会場だった。恐らく学生達が定期的に発表の場を持ったり(授業の一環だから持たされたりというべきか?)・卒業制作的にライブをやったり、今回のように外部の先生を呼んでの講義を行う際に利用するスペースとなっている模様。
 当然だがステージにはドラムが既にセッティングされているが、この度のセミナーのドラム講師である淳士さんの独自のセットではなく一般的(というべきか?)なドラムセット。確かワンバス・ツータム・ツーフロアタム・ハイハット・クラッシュ・ライドという。スプラッシュと、あとハイハットより後方にティンパレスあったかも。でもまあそれでも基本のセットに2,3増した程度。

 5分押しでセミナー開催。教務課のスタッフさんの進行の元、今回のドラム講師である淳士さん、ベース講師である山田章典さんが入場。まずは一曲ベースとドラムのみでの演奏を賜る。その後軽い雑談を交わし、質問コーナーに移るという流れ。

 雑談では全国8個所(当日である東京含む)を廻ってきたことを踏まえての感想を求められていたが、「学校によって…というか先生によって違うのかな?それぞれ特色があって面白かったですよ。しっかり練習してセッションをこなしてくる(在学生とのセッションが設けられた会場もあったのだろう)学校もあれば、カオで演奏してくる学校もあって、本当さまざまでしたね」とのこと。個々のスペックでなく、学校の校風というか、先生によって大きく変わってくるという点に触れていたのが印象的であり、いい師に出会えるかどうかというのは独学でなくこういった場で音楽を学ぼうとする人にとっては重要な一言であったと思う。なおカオで演奏するというのはこの時点ではピンとこなかったのだが、曲の表情だったり思い描く音の強弱やフレーズだったりを、音でなく文字どおりカオの表情でプレイしていることを指しているようであった。
 他にはどこの学校が一番面白いことがあったかという質問もあったが(そしていい大人ならこういうのは答えづらいと思うのだが…)、スケジュールがタイトであり記憶が覚束ないので答えられないということであった。

 質問コーナーは、あらかじめセミナー受講者に提出させたアンケートから、教務スタッフが有意義と思われる質問を数件選んでその場で口頭で窺うという形式であった。この為に録音機器を持ち込めるのなら許可を頂いて持ち込もうかと考えていたのだがそもそもレコーダーを忘れてしまったので許可以前の問題で頓挫してしまった。以下記憶している限りを。

Q:ツインペダルはどうですか?
 ざっくりにもほどがあるってなくらいざっくりだった記憶なのだが、どうですか?ってほどにまでざっくりだったかは曖昧。淳士さんの方も「広いですね」と当惑しておられたが、「ライブハウスってステージが狭くて、足場がないのよ。そんな時便利ですね」的なことを返しておられた。
Q:山田さんにとってベースとはどんな楽器ですか。
 一瞬言葉に詰まった後、「…深いな」と、これまた解答者を当惑せしめる質問。これの前にドラムとベースの関係性についての質問があったか、それともこの質問に対しての回答の中でそこに話が及んだか、記憶が曖昧なのだが、そのお話の中で最も印象に残り、核にある部分ではないかという点が「ベースって実は支配力のある楽器」の一言。続けて「低い音って目立たないようでいて、全体のグルーヴを支えているからどんな風にもコントロールできる」といったニュアンスのことをおっしゃっていて、さらに「いいバンドはベース・ドラムっていうリズム楽器が優れている」といったことも仰せだった。レポートなので持論は極力取りざたしたくないのだが、強く同意するところであるということくらいはコメントを添えたいほどに同意したお話だった。
Q:背が小さいのですが、ドラムをやる上で不利ですか?
 「身長は関係ない。俺の知ってる奴で小さい奴がいるんだけど、La'cryma ChristiのLEVINって奴がいて、俺の知ってる中では一番正確なドラムを叩く。それこそドドパッっていう基本的なビートにおいてもあいつ以上に正確に叩く奴を知らない」といったかんじで、だいぶ意訳だと思う(正確って言ったか綺麗って言ったかすらも曖昧)が、身長がなくても不利でないということと、体現者としてLEVINさんの名前を挙げていたということだけは確か。
Q:淳士さんのドラムセットは大変複雑ですが、最初はどのようなセットでしたか。またどのようなきっかけで増やしていったのですか。またこれを導入することによって大きく変化したというものは何ですか。
 これはですねえ、というような前置きをしてから、どれくらい色々着いているか、知らない人に軽い説明が、あったかなかったか、そこら辺はちょっと曖昧だが、「僕は見た目から入るんですよ。ワシャワシャーっといっぱいついてて派手な方がいいじゃないですか。それでああいうセットなんですけど、最初は学生でお金がなかったから、通販でイッキュッパの、ワンバスツータムっていうシンプルーなものだったですよ。そんでドラムやってた友達がですね、大学受験するっていうんでドラムセット譲ってもらったんですよ。それをそんままくっつけて、ツーバス」(ここで司会の方が「そこでもう既にツーバス(笑)」と合いの手を入れて、「そう、ツーバス」と繰り返す)にXXインチタム2個、XXインチタム2個、XXインチフロアタム2個、みたいな」と、本当にまんま並べただけという、しかし数だけは倍数になったエピソードを話す。これは淳士さん自身の著作物であるドラム教本にも載っているエピソード(その本ではニッキュッパではなかったかと記憶していたのだが、まだ確認していない)であり、これに続く「そのドラムが特注(シェルの径の規格が、ということだろう)でヘッド張り替えようにもどれも嵌らなくて、ドラムごと使い捨て、みたいなドラムだった」ということも含め既知の回答であったのだが、改めて本当に「こういう曲でこういうフレーズ・こういう音を入れたいから」という必要に応じて導入されたという経緯でないとこから(完全にカタチから)入ったのだな、ということが判明した。なお後半の質問に対しては、質問の意図が不可解であったのか質疑応答として成立しない回答だった為、割愛とする。
Q:スティックを逆に持ってプレイしている時がありますが、どうしてですか?
 これはドラムをやっていれば言わずもがなな質問だが、「気分の問題」と「チップ側の方より当然重い分、遠心力がついて強く叩ける」という回答であった。この点に関してはドラマーによって微妙に理由が違って、結局のところ本人の満足のレベルっぽいのでやっぱりキモチの問題なのだろう。個人的には逆にストロークがコンパクトになると感じるのだが、本当に個々人の体感によるのだなあと改めて実感した回答だった。
Q:バンドをやっていくにあたって、何が一番重要ですか?
 淳士さんが「大人な質問だね、そういうのは山田くん担当で」とコメントし、山田さんが回答することになる。僕はバンド経験があまりある方ではないのですけれども、という旨の前置きをした上で、「やっぱり人間関係が大事になってくると思う」と結論を冒頭に持ってきて、理由を続ける。大人な回答(笑)なので、要旨だけ意訳すると、「バンドっていう音楽を複数人で作っていく中で、相手のことを尊重できる人でないとうまくいかない、空気が読めないとグルーヴは生まれない、技術だけあっても駄目、実際この人こんなに巧いのにどうしてメジャーシーンにいないんだろう、という人はやっぱり人間的にそれなりの理由があるし、逆にそこまでの技量がなくても活躍している人は挨拶だとかそういった基本的なところからしっかりできている」といった内容であった。これは採用人事などという職種についてる以上抑えておくべきセオリー中のセオリーであり、上記同様強く同意するところであるが、要するに「音楽業界といえど、会社や勤めに出るのと同じでそこには他者の存在があり、他者の協力や理解が必要となり、社会性というものが要求されるという点に変わりはないのだ」ということになろうか。こういうことに関して言葉で論じても、結局当人の中でそういうものが行動として息づくかどうかに掛かってくるので、この言葉を聞いてすぐに実践ができる人が「空気を読める人」ということになるだろう。


 以上が記憶しうる限りの質疑応答である。その後セミナー来場者とのセッションがあったのだが、この日はギターをやる子が1人しかおらず(正確には2人ほどいたようなのだが、挙手してステージに上がった子が1人であった)、淳士さん・山田さんと受講者というセッションは一組しか実現しなかったが、ドラマーと山田さんのリズムセッションは5組ほど実現した。
 みなそれぞれに精一杯ステージでやれる限りのことをやろうとプレイするのだが、やはり着目すべき点は先ほどの質問にも絡むことだが、「空気を読める人」というのが、こういうところに現れる、というところである。こういうジャムの場合は譜面などなく、相手の出方を窺う以外に手がかりはないわけで、それは勿論プロであるお二人が計ってくれることなのだが、それに丸投げでは曲が終わらないわけであり、他のプレイヤーをどれだけ見られるか、聴けるか、意図を読めるか、これがかなり如実に表れていたのではないか。プロアマの問題は別として、まず純粋に年数というキャリアの差があるので、大人がコドモを窺い、導くのは当然だろうが、山田さんが覗き込むパターンが圧倒的に多かった。アガっているのと必死なので視野が狭くなってしまい、山田さんがかなり身を乗り出さないと気づかない人、最初はそういう状態でも、一度覗き込まれて、「ああ、自分のプレイにばかり必死になっちゃ駄目だ、ちゃんと観なければ」と視野をすぐに広げられる人、観ているんだけれど意図をうまく解せない人と様々であった。こんなことも言わずもがななのだけども、アマチュアって最初コピーをやる場合が多くて、それはイコール、すでに従うべきルールがこの世に存在しているということで、譜面だけでなく、コピー元のバンドが自分達の仲間と空気を読み合いながら作っていったグルーヴをなぞればいいので、窺う必要がそんなにない場合が多いということになる。もちろんコピーったってあらゆる面で全員が完コピしてるわけじゃないだろうし、メンバーを窺う必要が出てくるわけなんだけども、こういう"なぞるべき指針"がない状態に、自分の身を置くことによって、得られるものは大きいと感じられた。実際淳士さんも「恥かいていけ恥かいていけ」「こういうのどんどん経験していけ、絶対に伸びるから」と仰せだったし、今日のこのステージの中で臨機応変に対応していた人なんかは、まさにそのステージ中に伸びていっていたということだったのだろう。それと併せて印象に残っているのが、セッションの後にテンパってしまったのか握手を忘れてステージを降りてしまう子に対して、こういう場合はちゃんと握手して降りる、こういう礼儀は大事と言って諌めた山田さんの毅然とした指導者としての態度であった。実際に自分の生徒ではないから、という理由で胸に秘めて流してしまわない、人生の先輩としての在り方に深い感銘を覚えるところである。

 最後にもう一度、一曲ベースとドラムのみでの演奏を賜ってセミナー終了。結語として両人から一言ずつ賜る。山田さんのはあまりにも完璧すぎて教科書のような隙のないお話だったため、逆に山田さんの話だったのかどっかで読んだ話だったのか分からなくなってしまったので割愛させていただくとして、淳士さんの方は、「音楽やるなら音を楽しめ」という、原点回帰のお話をされておいでだった。原点でありながら高次になって改めて分かるものというか、いわば自分のいる街を高台から臨んではじめて己を知る、みたいなものなので、これを実感として分かるには相当な年数とたゆまぬ修練が必要となってくるのだろうが、その経緯で「音を楽しめ」ればこれ以上はないということなのだろう。

 客観的なレポートを目指した割に記憶が曖昧なぶん、解釈を織り交ぜていったせいで結局主観が入ってしまったが、大変有意義な1.5時間であった。なお不思議なことにこの日来場者に渡されたチラシにMI東京校の学校(入学)案内パンフレットが入っていなかったわけだが、特筆すべき点として、MIには学校の図書館や予備校の自習室のように、無料で利用できる自習室(ドラムセット配備)があり、昼夜いずれの生徒でも、開いていればいつでも利用可能なのだそうだ。これはつまり家に設備がなくても、設備はあっても音の問題で思い切り練習できない場合でも、やる気さえあればガンガン練習することができるということだ。興味がある人は体験入学を受けて、どういう設備なのか、どういう授業なのか実際に自分で確かめてみると良いだろう。

◆参考リンク◆
MIジャパン
JUN-JI OFFICIAL WEB SITE
淳士本!! 〜シャムシェイド〜(※ドラム教本)

050331 了